まずは落ちてしまった現実をしっかりと受け止め、その上で自分が今後どうしたいかを時間をとってしっかり考えましょう。
公立の学校の先生を目指している方にとって、教員採用試験に落ちたことは精神的にくるものがあるでしょう。ただ、教員採用試験に合格し教員採用候補者名簿に掲載されても、成績順に採用されるため、必ず先生として働けるわけではありません。
「専任」として4月から先生として働けなかったケースを想定しておき、その場合の自分の選択肢およびやるべきことを確認しておきましょう。
教員採用試験を落ちた場合の進む道
教員採用試験で不合格だったとしても、選択肢はいろいろあります。考えられる6つの選択を解説していきます。また、それぞれのメリット・デメリットも簡潔にまとめたので、自分はどれが向いているのか考えるきっかけにしてください。
来年もう一度チャレンジする
【メリット】
●教採の勉強だけに時間を投資することができる
【デメリット】
●自分ひとりで計画をして、勉強し続ける必要がある
あなたが受けた教員採用試験のライバルには、大学4年生以外に、何度も再チャレンジしている方、非常勤講師として働きながら受験している方も含まれます。
教員採用試験に回数制限はありません。そのため、不合格だったとしても来年また挑戦することができます。
あなたが本当に先生としての自分をまずは実現させたいのなら、来年もう一度教員採用試験を受験すると良いでしょう。
教員採用試験の一次試験は早い自治体で7月頃に実施されます。すでに1年も時間はありません。翌年の再受験に向けて勉強に全力集中し、合格を勝ち取る人もいます。その期間の生活費をどうするかといった経済面さえ解決できれば、選択肢に入れてもいいでしょう。
自分がどうして不合格になったのかをしっかり分析し、早めに計画を立てて効率よく勉強を進めていくことが大切です。
臨時的任用教員、非常勤講師として働く
【メリット】
●教採で不足していた力を実際の現場で高めることができる → 他の受験生と差がつく
●一生懸命働き続ければ、管理職に評価される → その姿を見て、教採でポイントがアップするかも
【デメリット】
●教採の面接官によっては、現場を経験した「講師」に高い期待をする → 対策が必要
●現場に入ってから忙しく、筆記試験の対策がきちんとできない → 筆記試験があるか確認を
圧倒的に多いのが、非正規雇用の「講師」となるケースです。講師には、常勤の講師である臨時的任用教員と、非常勤講師があります。いずれかの立場で採用され、働きながら教員採用試験にもう一度チャレンジする人は、毎年数万人規模と言われています。講師として任用された経験があれば、次年度以降は「特例選考」枠で受験ができ、筆記試験が免除になる場合があります。
どの自治体もおよそ10月に最終合格発表があります。そこで不合格だったとして来年講師をすると決めた場合、教育委員会のHPを見て「講師登録」のスケジュールを立てましょう。自治体によりますが、11~12月あたりに講師登録が始まります。2月や3月に出して、既に講師の枠が埋まってしまう可能性があります。そのため、受からない場合も考えて複数の自治体に講師登録をしておくことがオススメです。
ただし、登録はあくまでも「登録」で、必ずしも任用となるとは限らないので注意してください。ずっと電話がこなくて、無職の日々が続く可能性があります。
なお「臨時的任用教員」と「非常勤講師」には以下の違いがあります。
臨時的任用教員 | 非常勤講師 | |
勤務形態 | 常勤(正規教員とほぼ同じ) | 非常勤(担当する授業のみ) |
給与体系 | 月額制・ボーナスあり | 時給制・ボーナスなし ※条件を満たせばボーナスありの場合もある |
担任 | あり | なし |
部活動顧問 | あり | なし |
兼業 | 不可 | 可 |
常勤講師は、1年目は正規採用とさほど給料は変わりません。手取りで20万円くらいです。正規と違うのは、昇給のペースです。なお、非常勤講師は1コマおよそ2,000円~2,500円です。
私学教員
【メリット】
●常勤講師と同じように、授業や生徒対応など教員としてのスキルを高めることができる
●学校との相性が合えば、そのままその学校で働き続けることができる
【デメリット】
●公立と違って、その学校の経営自体が給料や人員カットに響く可能性がある
●私立学校は異動がないため、現場が人間関係に影響されやすい
私立学校の先生になるためには、民間の企業と同じく就職活動をします。
最近はほぼ全ての私立学校でHPはあるので、各学校のサイトから「採用情報」のリンクを確認しましょう。募集要項や求める条件が記載されていますので、確認して良ければ応募の準備をします。応募方法は、必要書類を郵送で送る、メール、専用の応募フォーム…と学校によってさまざまです。
1~3月に採用募集をかける私立学校もありますので、粘り強く調べていきましょう。
私立学校は、学校単位の採用となります。そのため、その学校の持つ教育理念や校風にマッチするかが選考においてとても重要になります。また、私立学校の募集人数は学校によってしていない年もあれば、2~3名ほど募集する場合があります。
私立学校の先生は、公立学校と違って、異動がありません。公立の場合は約3~10年で違う学校へ異動しますが、私立学校の場合は定年までずっと同じ学校で勤めることになります。
私立学校で働いても、途中から教員採用試験を受けて公立教員になる方も実際に多くいますので、経験を積む場所としてまず私立で働くのもありですね。
教職大学院
【メリット】
●社会に出るまで、2回の教採受験のチャンスができる
●専門性を高めつつ、教採対策の学習時間を確保できる
【デメリット】
●学費がかかる
●現場経験を踏んでいない場合、研究テーマの課題がぼやける可能性がある
最近では、大学院・教職大学院に進学し、再度教員採用試験を受験するという選択肢は珍しくありません。学費はかかってしまいますが、専門性を磨くことができ在学1年目から教員採用試験を受けられるメリットがあります。
大学院 | 教職大学院 | |
学位 | 修士(専攻) | 教職修士(専門職) |
教育課程と方法 | 研究指導に重点 | 専門的技能修得に重点 |
修了要件 | 修士論文の提出が必要 | 修士論文の提出は必須ではない |
教職大学院は、教員としての専門的技能を高めるためのカリキュラムが組まれているため、理論と実践の掛け合わせを重視し、実習の機会が多く設けられているため、現場経験を積むことができます。
大学院によっては、1月ころの出願(第三次)まで募集しているケースもあります。遅い出だしとなった方でも、チャンスはあるかもしれませんので粘り強く情報収集をしましょう。
教採から民間就活に切り替える
【メリット】
●教員以外の職業の経験が、大きく視野を広げるきっかけになる
●教員以外の道が拓ける可能性がある
【デメリット】
●はじめての就活となるため、自己分析から企業の情報収集までかなり時間がかかる
●自己分析をきちんとせずに就活すると、就職してから後悔する可能性がある
教員になるのは本心では迷っている人は、思い切って民間企業へ就職することもおすすめです。民間企業での社会人経験は必ず教育現場で役立ちますし、社会人になってから「やっぱり教員になりたい!」と思うならもう一度教採を受ければいいのです。
ただ就活の基本知識すら学習していなかった方にとっては、この選択は本当に不安でしょう。今までの余暇の時間を全投入して、一つずつステップを踏めば可能です。
今後教員採用試験を受ける可能性が少しでもあるなら、教育の仕事からお仕事を探すのも良いですし、全く異業種で仕事を経験しても問題はないです。
就活・転職は、先生の経験しかない人にとっては、未知の領域。そのため、無料でサポートを受けられる「転職エージェント」の利用は必ずしてください。エージェントからは「自分はどのくらい市場価値があるのか」「履歴書や志望動機は適切か」といった相談が受けられます。タダですから、利用しない手はありません。
塾講師
【メリット】
●児童・生徒にわかりやすく教える力が身につく
●働き続けたければ、そのまま塾講師として極めていくことができる
【デメリット】
●教採を受けなおす場合には、学級経営力が不足して見られる
●児童や生徒を学校現場と違って、よりテストの点数で評価する癖がつきやすい
塾講師は、アルバイトとしての採用と正規としての採用の2種類があります。経済的に余裕があれば、アルバイトで塾講師から入っても問題はありません。
ただし正規採用として考えているのであれば、まずは塾のHPから採用情報を確認しましょう。
まとめ
教採に落ちたことで「自分は先生に向いていないんじゃないか」「先生になるの諦めようかな」とショックでしばらく立ち上がれないかもしれません。
落ちたことで悲しい気持ちは抱いても、まずは現実はしっかりと受け止めましょう。学校の先生は、生徒を教える立場にある人です。
教採の筆記試験は意外と大学レベルというより、中高レベルの問題が多く出題されます。先生になったらそういった出題された問題を教える立場になります。だから落ちた原因が、筆記試験が不十分ならしっかりと勉強し直すべきです。
また、就活と両立していて、教育実習の直後の教採だったから「対策してる時間がなかったから落ちた」と言うのはただの言い訳です。
10年以上非常勤講師を続けてて毎年受験してても落ちている人もいます。
落ち続ける人は特に「自責思考」が低いと感じています。まずは自分を見つめ直し、次に何をすべきか今一度考えて行動を起こしていきましょう。